難関大学を目指す受験生にとって予備校を利用することは一般的なことになりました。
数ある予備校の中で東進はビデオ視聴による授業スタイルを早くから実施し、有名講師を前面に出したCMなど、ある意味「特徴的な予備校」と言えます。
東進だけではなく河合塾や駿台予備校でも行われている制度で「特待生制度」というものがあり、成績優秀者の学費を一定額免除することで優秀な生徒を囲い込むものです。
東進の特待は種類が多いことが特徴で、その中の一つに「数学特待(制度)」があります。
東進の数学特待とは「何を目指す」もので「どのような生徒」が対象の制度なのか、制度の仕組みや成果について解説していきます。
記事の内容
- 東進の数学特待とはどのような制度なのか
- 東進の数学特待は何を目指すものか
- 特待に選ばれる基準
- 数学特待の判断に使われるテスト
- 特待だと学費などはどうなるのか
- 数学特進は中3でどこまで学ぶのか
- 数学特待はいつまで続くのか
- 特待は難しい?
- 模試について
- 数学特待の期間が終わったあと
- 東進の数学特待にまつわる裏話
- 更新するための条件
- 途中で辞めたくなったら
- 公立学校の生徒に数学特待は無理なのか
- その後も考えるべき
- 中1から始める「東進の数学特待」のさらに上
- 数学特待の評判は?
- 東進の数学特待はやりきれる生徒にはメリットが大きい制度
- 総括
東進の数学特待とはどのような制度なのか
東進独特の制度である「数学特待」ですが、その名のとおり数学の学習に特化した特待性制度です。他の予備校で一般的に見られる特待制度は高校生もしく浪人生を対象としています。
ところが東進の数学特待は早ければ中学2年からスタートします。どのようなことなのでしょうか?
非常に独特の制度ですが、まずは東進が実施している数学特待の仕組みと、他の特待制度との違いなどを解説します。
東進の数学特待は何を目指すものか
当然ですが高校入学から始めて3年分を1年で詰め込むのは無理があるので、東進の数学特待は中学2年か中学3年(東進では高0生と呼んでいます)からスタートする特待制度となっています。
このことも数学特待の特異性が分かるのですが、1教科を早く仕上げることでその後の高2から高3まで、かなり余裕をもって受験勉強ができるので、この特待制度は難関大学を目指すことが最終的な目標だと言えるでしょう。
特待に選ばれる基準
東進の数学特待に選ばれると「特待制度」なので、当然いろいろな優遇措置を受けられます。つまりそれなり以上に優秀な生徒ではないと選ばれないというのは理解できます。では選考の基準はどうなっているのでしょうか。
東進は数学特待の選考基準を公表しているのですが、それによると次のいずれかをクリアした生徒です。
- 通知表(通信簿)の直近の評価で数学が5段階評価の「5」であること。かつ入学時学力診断テストの数学の成績が優秀であること
- 「全国統一中学生テスト」「中学学力判定テスト」もしくはその他模試にて、数学の成績が優秀であること
ここで問題なのは数学の評価が「5」という部分で、有名進学校であればともかく、普通の公立中学校の学習進捗に合わせた評価が「5」というだけでは、高校で学ぶ数Ⅰから始まるカリキュラムについて行けるわけもないので、ほぼ「入学時学力診断テスト」で決まると言って良いでしょう。
いずれにしても中学生の時点で図抜けた数学の成績を収めていなければ、東進の数学特待に選抜されないのです。
数学特待の判断に使われるテスト
公にはされていないのですが、東進の数学特待は「中高一貫校」の生徒の教育を想定している特待制度なので、実は選抜基準も公立中学の生徒と有名進学校の生徒では違うのが実情です。
入学時学力診断テストでは「全国統一中学生テスト」レベルの問題を解かなければならないので、基本的には中学で学ぶ数学の履修範囲を終えているくらいの学力がなければ、数学特待になるための基準をクリアできません。
特待だと学費などはどうなるのか
東進の数学特待に選抜されると学費がかなり優遇されます。一般の東進生との違いはこのようになっています。
数学特待 | 一般 | |
入学金 | 11,000円 | 33,000円 |
担任指導費 | 0円 | 33,000円 |
模試費 | 0円 | 12,650円 |
通期講座受講料(1講座あたり) | 0円 | 77,000円 |
ちなみに数学系の通期講座は15講座あるので、それを全部受講すると1,155,000円にもなります。それは無理にしても、比較すると約70万円分以上の授業や試験をタダで受けられることになります。考えてみると数学特待の学費を一般の生徒が負担しているようなもので、何とも複雑な思いになります。
数学特進は中3でどこまで学ぶのか
東進の数学特待は高1のうちに数Ⅲ・Cまで、つまり高校数学の全範囲の終了を目指すというものです。基本的に中3から始まるのですが、始める月によって違いはあるものの、数Ⅱを学ぶところまでは進みます。東進が公表しているカリキュラムの一例を見てみましょう。
引用:東進公式HP
これを見ても分かるように、生徒によってはかなりハードなカリキュラムとなります。高校受験のための勉強をしながら、同時に大学受験の勉強をしているようなもので、志を高く持たないと大変な思いをすることになります。
数学特待はいつまで続くのか
東進の数学特待は「高1のうちに数Ⅲ・Cまで終える」ことが絶対条件なのですが、具体的に高1のいつまでに終えるかは個人差があるのが実態です。東進では「高1の1学期までに一通りの履修を終了し、夏からは応用・発展に入るのがオススメ」としています。
そもそも東進の数学特待に選ばれている時点で優秀な生徒が多いので、経験者の意見を総合すると「秋までには誰でも終わる」というのが一般的なようです。つまり数学特待が終わる11月末まで時間をかけるようでは、東進の数学特待の中では遅い部類なのです。
特待は難しい?
何かに集中するということは、人によっては別の何かを犠牲にするということになってしまいます。東進の数学特待の難しさはこの点にあると言えるでしょう。
そもそも数学の成績に秀でている生徒が選ばれているので、高1までに数Ⅲ・Cまで終えるという濃い内容は問題ないのかもしれません。しかし生徒によっては「高校受験のための時間が削られる」ということもあり、特に公立中学に通う生徒にとっては難しいものです。
一方で中高一貫校の生徒は高校受験の心配がない分有利なのは間違いないので、これも「東進の数学特待は中高一貫校の生徒向け」と言われる一因です。
模試について
東進で数学特待に選ばれると数学だけではなく、全教科の模試が負担なしで受け放題となります。ただ数学特待には必ず受けなければならない模試があり、それが数学特待の条件の一つとなっています。
その模試とは年4~6回行われる「共通テスト本番レベル模試」の数学です。つまり高校で履修する数学の全範囲をカバーする模試を受けることで、習得状況を把握するということになります。
数学特待の期間が終わったあと
高1の11月で数学特待が終わったあとはどうなるのかと言えば、直営校の「東進ハイスクール」とフランチャイズの「東進衛星予備校」では違いがあります。東進ハイスクールでは数学特待が終わったあとの特待制度がないので、普通に学費の必要な生徒になってしまいます。
一方フランチャイズの東進衛星予備校では、校舎によって独自の特待制度を実施しているところがあり、成績優秀者であれば学費など優遇されることがあります。
東進の数学特待にまつわる裏話
難関校を目指す受験生にとって数学の成績が重要なことは当り前です。
それに特化した東進の数学特待は「合格者数を増やしたい」という東進自体のニーズと、ほとんど費用をかけずに数学の勉強をライバル受験生より先に進めるという生徒のニーズがかみ合った、両社にとってWin Winの特待制度と言えます。
しかしどのようなことも良いことばかりではないのが世に常で、一定数は失敗事例が存在するものです。
また直営とフランチャイズによる違いや、さらに凄い特待制度など、東進の数学特待にかかわる色々な問題点・補足情報を見てみましょう。
更新するための条件
東進の数学特待では単元ごとに試験を行い、そこで基準点をクリアできなければ次の単元へ進めないシステムになっています。それとは別に中3から高1に進級するタイミングで数学特待の適用を継続するかしないか判断されます。
つまり厳しい言葉で言えば「この生徒は数学特待の適用に値しない」と判断されると、特待の適用が停止されるのです。具体的な基準は公表されていませんが、最近は判断基準が厳しくなっているようで、「継続してもらえなかった」という書き込みなども以前より多くなっています。
途中で辞めたくなったら
費用的な面ではかなり優遇される東進の数学特待ですが、始めたものの「ついて行けない」「高校受験の勉強ができない」「週3回校舎へ行くのが辛い」などの理由で、辞めたくなる生徒もいます。
本人にとっては非常に悩むことでしょうが、東進側としては「痛くも痒くもない」ことです。本人から辞めること以外にも、東進側から継続しないケースもあることから、必要以上に悩むことはありません。数学だけで人生が決まるわけではないので、無理なら素直に辞めてしまいましょう。
公立学校の生徒に数学特待は無理なのか
東進の数学特待の条件の中に「数学特待生は、校舎の模範として週3回以上登校し」というものがあります。この条件ですが、公立中学の生徒には特に念押しするようです。
中には「数学特待になるためには高校受験を諦めるくらいの気持ちで入ってください」と言われるケースもあるようで、東進サイドから見ても公立中学の生徒では数学特待は難しいと考えていることが分ります。
実際に高校受験と並行しながら、中3のうちに高校で学ぶ数Ⅱまで勉強することは大きな負担です。けっして無理ではありませんが、中途半端に出来ることでもないのが数学特進なのです。
その後も考えるべき
東進で数学特待に選抜される生徒は、校舎ごとに上限が決められています。東進の校舎選びでは「通いやすさ」は重要なことですが、もう一つ考えるべき要素は「数学特待が終わったあと」のことです。
先ほども少し触れましたが、直営校の「東進ハイスクール」とフランチャイズの「東進衛星予備校」では、後者の方が数学特待終了後の優遇措置があるうえ、校舎の判断による自由がききやすいので、直営校よりフランチャイズの東進衛星予備校を選んだ方が良いのです。
中1から始める「東進の数学特待」のさらに上
東進では中2・中3から始める数学特待とは別に、中1からスタートする特待制度があります。その名も「中1スーパーエリートコース」と言い、数学特待をはるかにしのぐ「中2で数Ⅲ・Cを修了する」というものです。
このコースへ入ることが出来るのは18校の指定中学校に入学予定の生徒だけで、中学入試直後の2月に選抜試験が行われます。
18校の指定中学校は次のとおりで、どれも有名進学校ばかりです。
- 開成
- 筑波大学付属駒場
- 麻布
- 桜蔭
- 聖光学院
- 栄光学園
- 海城
- 浅野
- 渋谷教育学園幕張
- 早稲田
- 女子学院
- 駒場東邦
- 筑波大学付属
- 東京学芸大学付属
- 渋谷教育学園渋谷
- 豊島岡女子学園
- 武蔵
- 雙葉
定員は毎年100名となっていますが、上記18校以外でも相当の好成績であれば入学できる校舎もあります。
数学特待の評判は?
東進の数学特待に関する評判で一番目にするものは「公立中学を露骨に差別」するということで、数学特待のカリキュラムを見ると無理もないこととも言えます。
中高一貫校の進学校では高2までに数Ⅲ・Cまで終わらせるので、東進の数学特待はそれを1年前倒しで修了するコースです。ところが公立校では中3では中学で修了するところまで、高3の終わりにようやく数Ⅲ・Cが終る授業ペースなので、どうしても不利になりがちです。
ただ無事に数学特待を終えた生徒からの評判は高いようで、出来る生徒にとっては質の高い授業や模試を「ほぼタダ」で受けられるメリットの方が大きいのでしょう。
総括:東進の数学特待はやりきれる生徒にはメリットが大きい制度
記事のポイントをまとめておきます。
東進の数学特待とは何か?
- 中2中3からスタートする特待制度
- 高1で数Ⅲ・Cまで修了を目指す
- 高1で数Ⅲ・Cまで修了を目指す
- 数学特待は数学の講座や模試が無料
東進の数学特待の実態とは
- 成績によっては途中で打ち切り
- 公立中学の生徒には難しい数学特待
- 東進ハイスクールより東進衛星予備校
- 驚きの「中1スーパーエリートコース」
- やりきれた生徒にとってはメリットだらけ
現役生の受験合格に重きをおく東進の予備校ですが、さらに早くから学力向上を後押しする制度の一つが「数学特待」です。早ければ中2から始める数学特待は、それにマッチした生徒にとってはメリットが多く、大学受験も有利に進めることができる特待制度です。
しかしそうではない生徒にとってはデメリットも大きいのが数学特待で、とくに公立中学の生徒にとってその傾向が強く見られます。
受験勉強は計画性がなにより大事になるので、数学の成績が秀でているだけで東進の数学特待に飛びつくより、大学受験のためのスケジュールに無理なく組み込めるかよく考えたうえで、申し込みをすることをお勧めします。
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