物流業界の人手不足は本当か?データやグラフを用いて分析する

物流業界 人手不足

物流を取り巻く現状について:国土交通省

「人手不足」といわれる業界はいくつかあります。今回はその一つ、「物流業界」を取り上げます。

物流業界は裾野が広い業界です。また、新型コロナウイルスの影響を受けて、EC(electronic commerce インターネット上でモノやサービスを売買すること全般)の需要増加を受けて、物流は需要の高い業界です。

一方、きつい肉体労働や長時間労働、給料が安いなどのイメージを持たれ、慢性的な人手不足に陥っていると指摘されることもあります。

本記事では、物流業界の裾野の広さを解説したうえで、人手不足の実態について、数量的に検証と解説を行います。併せて、働く職場としての物流業界の今後の変化についても解説します。

記事の内容

  • 物流業界の人手不足について
  • 事業による区別(海運・空港・陸運・倉庫・鉄道)
  • 職種の種類(物流営業、入荷保管出荷、ドライバーなど)
  • 下請け中小企業も多数存在
  • 物流業界の人手不足の実態:グラフ・データ
  • どの職種が不足しているのか
  • 人手不足はどれくらい深刻なのか
  • 他の業態と比較しても人手不足なのか
  • 物流業界の今後の景況感は?
  • 現在、物流業界を支えている労働力
  • 社員の高齢化
  • 女性社員比率
  • なぜ物流業界は人手不足なのか
  • ドライバーの給料は安い?
  • 長時間労働って本当?
  • 物流業界の人手不足解消に向けて検証
  • 労働生産性の向上(たくさん運ぶ)
  • 多様な人材の確保
  • 長時間労働の是正
  • 物流の重要性とポテンシャル
  • 物流業界の人手不足:データやグラフについて総括

物流業界の人手不足について

物流業界は非常に裾野が広いのが特徴です。人手不足について解説に入る前に、業界のイメージと業界の構造を想起いただくことを目的として、物流業界とはどんな企業があり、どんな職種があるのか、特徴的な業界構造を解説します。

  1. 事業による区別
  2. 職種の種類
  3. 下請け中小企業も多数存在

事業による区別(海運・空港・陸運・倉庫・鉄道)

物流業界は生産者から消費者に商品を届けるため、運送や倉庫の貸し出しを行うビジネスモデルです。

そのため、海運・空港・陸運・倉庫・鉄道という事業(運送手段)による大別が分かりやすいと思います。

上記の区分で代表的な企業名を記載した表が下記です。

陸運

日本通運、ヤマトHD、日本郵政、SGホールディングス(佐川急便)

空運

ANA、日本航空(JAL)、近鉄エクスプレス、名鉄運輸

海運

日本郵船、商船三井、川崎汽船

倉庫

三菱倉庫、住友倉庫、三井倉庫

鉄道

日本貨物鉄道

陸運のカテゴリーは分かりやすいと思います。空運は本業(旅客運送)と掛け持ちで行っています。海運は船を所有している伝統的な大企業が行っている傾向があります。

ご覧いただければわかると思いますが、物流専業の企業と、物流を兼業している企業も存在します。

職種の種類(物流営業、入荷保管出荷、ドライバーなど)

物流業界ならではの職種は、物流営業、入荷⇒保管⇒出荷などの業務、そしてドライバー(パイロットや航海士)の3職種です。

物流営業は、一般企業と同じく営業職ですが、顧客の物流課題の解決という大きな仕事になるのが特徴です。

入荷⇒保管⇒出荷などの業務は、検品や梱包、仕分けなどの、商品の入荷や保管、出荷までを行うための重要な仕事です。

ドライバーは、輸送や配送の業務といった、物流業界のメイン業務を担っている職種です。

下請け中小企業も多数存在

物流業界は下請け企業も多く存在し、中小企業も多く参入しています。

既述の、海運・空港・陸運・倉庫・鉄道という事業(運送手段)による大別では、大手企業がほとんどでした。そのような企業は、荷主からの元請け企業となることが多いのです。

業界全体では、荷主からの元請け企業を頂点としたピラミッド構造になっており、その下に「下請け企業」、「孫請け企業」が多数存在するという構造になっています。

人手不足の実態は、このような企業も含めて捉えていく必要があります。

物流業界の人手不足の実態:グラフ・データ

物流業界は本当に人手不足なのか、国土交通省や民間調査機関のデータやグラフを引用して、下記の検証項目を中心に解説していきます。

新型コロナウイルスの影響を受けて景気後退、停滞している状況も加味して、確認していきたいと思います。

  1. どの職種が不足しているのか
  2. 人手不足はどれくらい深刻なのか
  3. 他の業態と比較しても人手不足なのか
  4. 物流業界の今後の景況感は?

どの職種が不足しているのか

陸運は運送貨物の60%を締めていますが、そのような陸運(道路貨物運送)においては、ドライバーの不足が大きな問題となっています。

下記は、国土交通省が作成したドライバーの人手不足を表すグラフです。ドライバーが不足している企業の割合が高いことが分かります。

どの職種が不足しているのか

このように、物流の担い手であるトラックドライバーが不足しているのです。

人手不足はどれくらい深刻なのか

新型コロナウイルスの影響により、物流業界(ドライバー)の直近の人手不足感は、少し緩和している可能性がありますが、構造的な人手不足は色濃く残っていると推察されます。

なぜなら、景気後退においても採用意欲がある企業が一定存在するからです。

景気後退を加味したマイナビが実施した下記の調査データは、新型コロナウイルスの影響により、職種ごとの採用計画がどのように変化しているか調べたものです。

その結果、当初予定どおり採用する、あるいは数を増やして採用すると答えた企業の割合が一定程度あることが分かったのです。

人手不足はどれくらい深刻なのか

新型コロナウイルスの影響による景気後退により、全体の採用意欲は低下しています。物流業界も本来であれば、景気後退期において物流が減少するため、採用を控えるはずです。

このように、景気後退期においても、ドライバーという職種は一定の採用意欲があることが分かります。

他の業態と比較しても人手不足なのか

物流業界は、新型コロナウイルスの影響を受けてもなお、他の業態と比べても人手不足である可能性があります。

なぜなら、景気後退においても採用意欲がある企業が一定存在するからです。

景気後退を加味したマイナビが実施した下記の調査データは、新型コロナウイルスの影響により、業態ごとの採用計画がどのように変化しているか調べたものです。

その結果、当初予定どおり採用する、あるいは数を増やして採用すると答えた企業の割合が、物流業界というカテゴリーでは高かったことが分かったのです。

他の業態と比較

このように、景気後退期においても、物流業界は人を採用しようとしていることが分かります。

物流業界の今後の景況感は?

物流業界は、今後も需要が増加すると見込まれ、景況感は改善していくと思われます。

なぜなら、EC(電子商取引)関連の輸送・配送需要が今後増加すると見込まれるからです。

下記は三井住友銀行が作成した今後のEC市場の広がりです。Amazonや楽天は当然ですが、今後はメルカリなどのフリマアプリの浸透によって、C to C(Customer to Customer)の市場も拡大していく予測です。また、中国などに比べ日本のEC化率は9%と、大きく伸び余地を残しています。

物流業界の今後の景況感

このように、EC市場が拡大すると、個人向けの宅配需要が増加すると見込まれます。

引用:国土交通省 物流を取り巻く動向と物流施策の現状について
引用:株式会社マイナビ 新型コロナウイルスが転職市場に及ぼす影響
引用:三井住友銀行 物流業界を取り巻く環境~新型コロナウイルス感染拡大をふまえて

現在、物流業界を支えている労働力

今後、物流業界の人手不足が助長されるかどうかは、景気の動向のほかに、若い人材が採用されているのか、女性の採用や活躍が進んでいるのか、も重要なポイントです。

国土交通省が作成したデータをもとに、自動車運送事業の社員の高齢化と、女性社員の比率について調べたところ、このまま放置すれば人手不足はさらに助長されることが分かりました。

  1. 社員の高齢化
  2. 女性社員比率

社員の高齢化

自動車運送事業は、他産業と比較して社員の高齢化が進んでいます。

下記は、国土交通省が厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにまとめた、自動車運送事業と他産業の社員平均年齢の比較です。他産業と比較して、社員の年齢が高いことが分かります。

社員の高齢化

このように、自動車運送事業の社員の高齢化が進んでいます。

女性社員比率

自動車運送事業は、他産業と比較して女性社員比率が著しく低いのです。

下記は、国土交通省が厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにまとめた、自動車運送事業と他産業の女性社員比率の比較です。他産業と比較して、女性社員比率が低いことが分かります。

女性社員比率

このように、女性社員比率が著しく低い状況となっています。

なぜ物流業界は人手不足なのか

物流業界、特にドライバーはなぜ人手不足なのか、国土交通省のデータやグラフを引用して、下記の検証項目を中心に解説していきます。

  1. ドライバーの給料は安い?
  2. 長時間労働って本当?

ドライバーの給料は安い?

ドライバーの給料(所得金額)は、全産業に比べて、若干低い金額です。

下記は、国土交通省が厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにまとめた、ドライバーの年間所得金額と、全産業の平均額との比較のグラフです。全産業平均に比べて、大型トラック運転者で約10%、中小型トラック運転者で約20%低い結果となっています。

ドライバーの給料は安い

このように、ドライバーの給料は、他と比較して若干給料が安い傾向にあるといえます。

長時間労働って本当?

ドライバーの労働時間は、全産業に比べて長い労働時間です。

下記は国土交通省が厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにまとめた、ドライバーの年間労働時間と、全産業の年間労働時間との比較のグラフです。全産業平均に比べて、大型トラック運転者、中小型トラック運転者で約20%労働時間が長くなっています。

国土交通省 物流を取り巻く動向と物流施策の現状について

このように、ドライバーの労働時間は、他と比較して長時間労働に及んでいる可能性があります。

引用:国土交通省 物流を取り巻く動向と物流施策の現状について

物流業界の人手不足解消に向けて検証

前章で解説してきた物流業界(特にドライバー)をめぐる現状について、国土交通省中心に、国の施策として解決を促進しようとしています。

下記は国土交通省の資料で、施策の一覧です。

物流業界の人手不足解消

代表的なものを解説していきます。

  1. 労働生産性の向上(たくさん運ぶ)
  2. 人材の確保
  3. 長時間労働の是正

労働生産性の向上(たくさん運ぶ)

重要な施策のひとつが、労働生産性の向上のための施策です。一度にたくさん運ぶことによって生産性の向上をはかり、収入にもつなげようという狙いです。

なぜなら、長時間労働時間のわりに給料が安いことの問題解決は、人手不足を解決するためには重要だからです。

具体的には、荷待ちの時間を短縮したり、1台のトラックで通常の2台分の輸送量を実現したり、再配達を減らしたりといった取り組みが労働時間を短くして今までと変わらない量、あるいは今までよりも一度でたくさん運ぶことを狙う施策です。

このように、効率化を行うことにより収入も増やせる取り組みが重要なのです。

多様な人材の確保

こちらも重要な施策のひとつ、「多様な人材の確保」です。

なぜなら、人手不足を直接解消する施策であるからです。

ドライバーは、人手不足とともに高齢化も問題になっています。若い人にドライバーになってもらえるよう、免許の内容の見直しや泊まりが発生する業務を軽減できるような施策を行っています。

また、女性ドライバーの採用も力を入れています。国土交通省は「トラガール促進プロジェクト」を行い、女性ドライバーの活躍を推進しています。

このように、多様な人材を確保するさまざまな重要施策が推進されています。

長時間労働の是正

人材の確保にもつながる、長時間労働の是正も重要な取り組みです。

採用ができても、長時間労働を苦に思い退職されては元も子もないからです。

具体的には、全産業にわたる働き方改革関連法案による長時間労働の是正に向けた取り組みを推進して、行政処分を強化しています。

また、労働時間管理が適正にできるようICTの導入を促進するなどを行っています。

このように、長時間労働の是正をめざして、働き方改革関連法案と絡めて各施策を実施しているのです。

引用:国土交通省 物流を取り巻く動向と物流施策の現状について
引用:国土交通省 トラガール促進プロジェクト

物流の重要性とポテンシャル

物流は経済、および企業経営にとって重要な要素です。物流に携わる仕事を行うということは、経済・社会にとっての意義があります。

経済にとっての重要性としては、よく物流は経済の動脈であると言われることからも分かります。物流が滞ると、経済全体の活動、家庭生活に支障をきたします。

また企業経営にとっては、部品の調達、エンドユーザーへの商品配送など、サプライチェーンと呼ばれる企業の活動において、すべてをつなぐのは物流です。

物流を円滑に進めることで社会の発展に寄与できることは、物流業界で働く意義ではないでしょうか。

また、既に解説したように、新型コロナウイルスの影響を受けた社会の変化によって、少なくとも物流需要は底堅い状態が続くでしょう。ECがさらに浸透すれば、市場全体が成長する可能性も秘めています。

働く環境として、改善余地がまだ大きいことも、言い換えれば魅力であるともいえます。

物流業界の人手不足:データやグラフについて総括

物流業界は、ドライバーをはじめ人手不足であることは間違いありません。景気が停滞している一方で、ECなどの社会変化を受けた新たな需要を取り込み、さらに人手不足が助長される可能性もあります。

人手不足の原因である長時間労働と給与の低さは、国土交通省を中心に国が改善を進めようとしています。まだ道半ばですが、今後の改善の余地は大きく、期待できる業界といっても過言ではありません。

何より、物流は社会・経済を支える、とても重要な事業です。

各種情報をもとに、働く選択肢として物流業界をとらえ直していただければと思います。本記事がそのようなきっかけになれば幸いです。

 

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