日本の小売業やサービス業における酒類(しゅるい)の販売および提供は、国で定められた法律に則らなければなりません。この法律では、酒類の販売には「免許」が必要であることと、「酒類販売管理者」の選任が義務付けられています。
今回の記事では、日本の小売・サービス業の中でも、フランチャイズ業態における酒類販売を中心に紹介し、免許の種類や販売管理者の選任方法について解説します。
記事の内容
- 日本フランチャイズチェーン協会:酒類販売管理研修とは
- 酒類販売には「免許」と「販売管理者」が必須
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 - 酒類販売の「免許」とは
一般酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許
特殊酒類小売業免許 - 「酒類販売管理者」とは
「一般酒類小売業免許」を申請・受領
所管の税務署に登録 - 日本フランチャイズチェーン協会の【酒類販売管理研修】をさらに詳しく
- 日本フランチャイズチェーン協会とは
「教育研修」
「調査研究」
「規範制定」
「広報」
「相談」 - 酒類販売管理研修について
酒類の販売業務に関する法令
酒類販売管理研修プログラム - 日本フランチャイズチェーン協会実施の酒類販売管理研修について総括
執筆:フランチャイズLABO
経歴:元飲食店経営者・最大4店舗運営・年商2億5000万円~従業員数120人~
日本フランチャイズチェーン協会:酒類販売管理研修とは
それでは、日本フランチャイズチェーン協会実施の【酒類販売管理研修】について詳しく解説していきます。
酒類販売には「免許」と「販売管理者」が必須
冒頭でも記載したとおり、日本では酒類の販売と提供について『酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律』と呼ばれる法律で、細かくルールが定められています。
酒類販売の「免許」とは
小売業が酒類の販売を行うには、「酒類小売業免許(しゅるいこうりぎょうめんきょ)」と呼ばれる「免許」の取得が必要で、販売方法や販売対象によって、以下の3つに区分されています。
1.一般酒類小売業免許
原則として、全ての品目の酒類を小売(通信販売を除く)することが出来る酒類小売業免許をいう。
2.通信販売酒類小売業免許
(1) 2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、通信販売によって酒類を小売することができる。ただし「課税移出数量」が3000キロリットル以上で、日本国内の酒造メーカーが製造・販売する酒は、通信販売酒類小売業免許では扱えない。
(2) 販売出来る品目は、日本産は地酒等小さな製造場で製造されたもの、または輸入酒に限られる。
3.特殊酒類小売業免許
特殊酒類小売業免許とは、酒類の消費者等の特別の必要に応ずるため、酒類を小売することが認められる酒類小売業免許をいう。
上記の内、コンビニや酒屋などが該当するのは「一般酒類小売業免許」で、3つの内では一番ポピュラーな免許とされています。
この「免許」申請に関するポイントをまとめると、以下5つとなります。
- 酒を陳列する店舗(販売場)がなければ申請できない
- 免許の申請は「販売場ごと」に行う必要がある
- 酒の種類に限定はなく、輸入酒や地ビールなども取り扱える
- 同一都道府県内であれば、通信販売等を行うことができる
- 免許が付与された後、「酒類販売管理者」や「責任者」を選任する必要がある
「酒類販売管理者」とは
酒類の販売は先ほども紹介したとおり「法律」で細かくルールが定められています。そのため「酒類販売管理者」と呼ばれる「責任者」を選出し、法律に則った販売が求められています。この「酒類販売管理者」は、「一般酒類小売業免許」を申請・受領した後、決められた期限内に選任し、所管の税務署に登録する必要があります。
期限が設けられているため、なるべく速やかに選出したいものですが、誰でも「責任者」として選任できるわけでは無い点は、注意が必要です。この「責任者」の選出に関しても法律で定められており、条件をクリアしたものを選出しなくてはなりません。具体的には「酒類販売管理研修」の修了者が対象となります。小売業の所属する業態によっても異なりますが、コンビニなどのチェーン店においては、「日本フランチャイズチェーン協会」で行われている「酒類販売管理研修」を受講することで、「責任者」として認定することが可能です。(※)
なお、「酒類販売管理者」を選任しなかった場合は法律違反として「50万円以下の罰金」に処されます。また、「酒類販売管理者」を選任していても、2週間以内に「酒類販売管理者選任届出書」を提出していない場合も同様に罰則の対象となり、「10万円以下の過料に処する」とされています。
酒類小売業者が行う「酒類販売責任者選任等の義務」について簡単にまとめると、以下の3つがポイントとなります。
- 販売場ごとに、酒類の販売業務に従事する者の中から酒類販売管理者を選任すること
- 選任から2週間以内に「酒類販売管理者選任届出書」を、所轄の税務署に提出すること
- 選任から3か月以内に「酒類販売管理研修」を受講させるよう努めること
※日本フランチャイズチェーン協会以外でも、財務省が認定している団体や地域ごとの小売酒販組合でも「酒類販売管理研修」を受けることは可能です。所属している団体や地域組合での研修有無を確認してみてください。
▼日本フランチャイズチェーン協会以外の研修実施団体(一部)
- 一般社団法人日本ボランタリーチェーン協会
- 一般社団法人全国スーパーマーケット協会
- 地域ごとの小売酒販組合
日本フランチャイズチェーン協会の【酒類販売管理研修】をさらに詳しく
ここからは、【日本フランチャイズチェーン協会】【酒類販売管理研修】を2つに分けて深掘り解説していきます。
日本フランチャイズチェーン協会とは
日本フランチャイズチェーン協会は、正式名称を『一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(Japan Franchise Association/略称:JFA)とし、フランチャイズビジネスに関する「教育研修」「調査研究」「規範制定」「広報」「相談」などを多角的に行っている団体です。
1972年に当時の通商産業省(現・経済産業省)の認可を受けて設立されており、主な会員は日本の代表的なフランチャイザー(フランチャイズ本部)及び、フランチャイズビジネスに関心のある企業をメインとした約100社で構成されています。
日本におけるフランチャイズビジネスの中枢でもあり、今回の記事でも取り上げている「酒類販売」などを始めとしたフランチャイズ関連の「研修」を、JFAにて受講することができます。
▼日本フランチャイズチェーン協会で受けられる主な研修
- スーパーバイザー士
- フランチャイズ経営士
酒類販売管理研修について
研修実施団体が行う「酒類の販売業務に関する法令」にかかわる研修を「酒類販売管理研修」といいます。
この研修では、酒類販売管理者が20歳未満者と思われる者に対する年齢確認の実施であったり、酒類陳列場所における適切な表示など、酒類の販売業務を行うにあたって遵守すべき法令に関する知識の修得を目的としています。また、これらの知識のほかにも、アルコール飲料としての酒類の特性や商品知識などを修得することにより、販売場における酒類の適正な販売管理の確保などの実効性を高めることを目的として実施されています。
日本フランチャイズチェーン協会(以下、JFA)では、各都道府県にて研修場所を確保しており、およそ月に1回から2回程度の頻度で研修が行われています。(地域によって異なります)
受講料は、JFAの正会員であれば1人あたり2,000円(非課税/テキスト代込み)で受講可能で、JFA会員以外でも1人あたり4,500円(非課税/同上)の受講料を支払うことで受講することが可能です。
研修内容は以下のとおりで、初受講者は約3時間、再受講者は約2時間の日程となっています。おおよその研修内容とスケジュールは以下を参考にしてください。
▼酒類販売管理研修プログラム
《第1編》 | 研修内容 |
オリエンテーション | |
第1章 | 酒類販売管理者 |
第2章 | 酒類小売業者等が酒類の販売業務に関して遵守しなければならない法令 |
第1節 酒税法関係 | |
第2節 酒類業組合法 | |
第3節 米トレーサビリティ法 | |
第4節 未成年者飲酒禁止法等 | |
ビデオ上映 | |
第5節 独占禁止法等 | |
第6節 環境関係法 | |
自己診断チェックテスト | |
質疑応答 | |
休 憩 | |
《第2編》 | 研修内容 |
第1章 | 酒類の商品知識等 |
第2章 | 酒類と健康等 |
第3章 | 参考法令 |
自己診断チェックテスト | |
質疑応答 |
日本フランチャイズチェーン協会実施の酒類販売管理研修について総括
今回の記事では『日本フランチャイズチェーン協会実施の【酒類販売管理研修】について』と題して、主に酒類販売に関する条件や協会、研修内容について紹介しました。以下に、簡単にまとめます。
- 日本の小売業における酒類の販売は、『酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律』によって細かく定められている
- 同法律では、酒類の販売には「酒類小売業免許」が必須と定められている
- 酒類小売業免許は3つの区分がされており、チェーン店などは「一般酒類小売業免許」が必要
- 酒類の販売には「免許」以外に、「酒類販売管理者」の選任をしなくてはならない
- 「酒類販売管理者」は財務省認定の団体で「研修」を受けなくてはならない
- 研修は初回・再受講でも半日程度のスケジュールで受講可能
- 受講料は、協会の正会員か否かで変わる
- 「酒類販売管理者」を選任しない、または期限を超えても所管の税務署に届け出ない場合は罰則の対象となる