一般的に「店長」とは、店舗の運営を任されている店舗の責任者を指します。大型のスーパーから、コンビニ、居酒屋などをはじめとした店舗には必ず配備されている責任者で、フランチャイズのお店も例外ではありません。しかし、フランチャイズには、「オーナー店長」や「雇われ店長」とよばれる2種類の「店長」がいます。
今回の記事では、「雇われ店長」とは何なのか?という点ついて、「オーナー店長」との違いだけでなく「役割り」や「メリット・デメリット」などを交えて解説します。
記事の内容
- フランチャイズの雇われ店長とは?
- 言葉の定義
- 経営権の有無
- 業務上の役割りは?
- フランチャイズの雇われ店長:メリット3つ
経営責任というリスクがない
出資することなく店舗経営のノウハウが手に入る
店舗管理者としての実績を積むことができる - デメリット2つ
意思決定権がない故の大変さ
労働と収入のバランスが悪い - フランチャイズの雇われ店長は、一般企業の「中間管理職」
- 総括
執筆:フランチャイズLABO
経歴:元飲食店経営者・最大4店舗運営・年商2億5000万円~従業員数120人~
フランチャイズの雇われ店長とは?
フランチャイズ経営において、経営者を「オーナー」と呼ぶというのは何回かお伝えしてきましたが、「オーナー店長」や「雇われ店長」は、「オーナー」とどのように違うのか?について「言葉の定義」や「経営権の有無」「業務上の役割」という3つの観点で解説します。
言葉の定義
まずは、「オーナー」と「オーナー店長」、「雇われ店長」について、言葉の定義を説明します。
「オーナー」は、フランチャイズ本部と事業契約を結び、出店の準備から店舗経営を行う事業者の事です。この事業者が自身の出店した店舗の店舗管理者として現場に立つ場合、この事業者を「オーナー店長」と呼びます。
一方、オーナーとは別の人物が、店舗の運営を任されて現場に立つ場合は、オーナーに雇われた店長であるため「雇われ店長」と呼びます。
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経営権の有無
基本的に、「雇われ店長」には経営権はありません。例えば、コンビニの「雇われ店長」であった場合、任されている店舗の”管理・運営の責任”はあるものの、新規出店や閉店などの、直接経営に関わるような意思決定権は持っていないのです。
一般的な企業に例えると「社長(≒オーナー)」と「中間管理職(≒雇われ店長)」のような違いがあり、雇われ店長は、「店長」という肩書のついた従業員といえます。
業務上の役割りは?
「雇われ店長」が、一般企業の「中間管理職」とお伝えしたとおり、その役割は店舗における「管理・運営責任」にあります。
具体的には、従業員(アルバイト)の勤怠管理であったり、売り場や売り上げの管理であったりと業務内容は多岐にわたります。店舗で発生したクレーム処理なども、基本的には店長が責任者として対応します。
また単に店舗の管理をするだけではなく、売上向上など数字的なノルマをオーナーから課されるでしょう。このあたりの役割も、一般企業における「中間管理職」と違いはありません。
フランチャイズの雇われ店長=メリット3つ・デメリット2つ
企業における中間管理職と等しい立場の「雇われ店長」ですが、どのようなメリットがあるのか?という点について見ていきましょう。一般的には、メリットは以下の3点と言われています。
雇われ店長の3つのメリット
- 経営責任というリスクがない
- 出資することなく店舗経営のノウハウが手に入る
- 店舗管理者としての実績を積むことができる
恐らく、将来的なビジョンがなく「雇われ店長」となる人は少ないでしょう。「いつか自分もオーナーとしてフランチャイズを経営してみたい」など、夢を持ってフランチャイズビジネスを学ぶには、「雇われ店長」という立場は打ってつけです。
まず、「経営責任」のリスクが無いという点は、大きなメリットです。フランチャイズ経営の成功率は一般的な起業に比べると失敗率は低く、5年生存率は「65~70%」と言われています。しかし、それでも「30%~35%」は失敗するのも事実であり、いきなり起業するのは多少なりともリスクが伴います。
しかし「雇われ店長」はあくまでも雇われている身であるため、仮にオーナーが経営を失敗して廃業したとしても、そのリスクはオーナーに比べると遥かに小さいものと言えるでしょう。仮にオーナーの経営ミスによって店舗が閉店し、失業した場合も、一般の会社員同様に「失業手当」の申請が可能です。
また、起業には資金が必要ですが、「雇われ店長」であれば出資することなく、店舗経営のノウハウが得られます。「本部との折衝はどのようにするのか」、「新規出店の基準」など、実際はオーナーでなければ知る機会の少ない業務内容についても、「店長」という立場であれば学ぶことが可能です。また、実店舗を管理するという特性から仕入れの仕組みや人材育成まで幅広く学べます。
そして、いざオーナーとして独立しフランチャイズビジネスを始める際には、以上の「店長経験者」というのが役立ちます。経営者としての立場だけでなく、現場の視点を持ち合わせているというのは、ビジネスを行う上で大きなアドバンテージを生むからです。
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雇われ店長のデメリット2つ
つぎに、「雇われ店長」のデメリットを見ていきましょう。雇われ店長のデメリットは以下の2つがあげられます。
雇われ店長の2つのデメリット
- 意思決定権がない故の大変さ
- 労働と収入のバランスが悪い
まずは、経営に関する意思決定権がないことで被る「大変さ」があげられます。
よくニュースなどで「名ばかりの管理職」などを耳にしたことはないでしょうか。「雇われ店長」は店舗の現場監督であり、一般企業でいうところの「中間管理職」です。仮に店舗の人員(アルバイトなど)がシフトに穴をあけた場合は、店長が代わりとして穴埋めしなくてはなりません。また外的環境を受けやすい店舗経営では、人員不測なども起こります。しかし、自身の判断でアルバイトなどの人員を増やすことはできず、店長がフル出勤したり、時間外労働が多くなったりと、自己判断で改善できないという大変さがあります。
また、このような過酷な状況に対して真っ当なオーナーであれば、代理出勤分や残業代などを支払ってくれますが、「36協定(サブロク協定)」を結んでいなかったり、違法な時間外労働を強いている場合もあるようです。以上のような極端な事例を除いたとしても、「雇われ店長」の労働と収入のバランスは悪く、場合によってはアルバイトよりも時給(時給換算)の収入が低い、といったことも起こり得ます。
また、店舗の売り上げなど日常的にノルマを課せられることもあるため、精神的なプレッシャーを受けやすいという点も、デメリットかもしれません。
もちろん、全てのフランチャイズオーナーが悪徳経営をしているわけではありませんが、以下の関連記事にも書かれているとおり、コンビニなどでは『労働基準法』の順守率が5%未満という結果も出ているため、注意が必要でしょう。
▼関連記事:【36協定の概要】フランチャイズ経営における危険な現状と実態
総括:フランチャイズの雇われ店長は、一般企業の「中間管理職」
今回の記事では、「雇われ店長」とは何なのか?という点ついて、「オーナー店長」との違いや「役割り」、「メリット・デメリット」を解説しました。簡単にまとめます。
- フランチャイズの「店長」は2種類である
- フランチャイズオーナーが店長をしている場合は「オーナー店長」
- オーナーに雇われている従業員が店長をしている場合は「雇われ店長」
- 雇われ店長は、一般企業における「中間管理職」的な立場である
- 雇われ店長のメリットは、「経営責任がなく」「出資せずにノウハウを得られ」「店舗管理者としての実績をつめる」という3点
- 雇われ店長のデメリットは、「意思決定権がない故に大変」で、「労働と収入のバランスが悪い」という2点